にこにこおはようプロジェクトについて

にこにこおはようプロジェクトは小児科医の三池輝久医師が診断・治療を行っている小児性慢性疲労症候群(CCFS)の調査研究をサポートするプロジェクトです。

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はじめに

 私たちが人生の1/3も費やしている睡眠がいかに大切であるかは皆さんよくご存知 のことでしょう。「ヒトはなぜ眠るのでしょうか?」まだ全てが分かっている訳ではありませんが、睡眠は身体の疲れを取るためではなく、「脳の働き(シナプス)を守るためにある」ことが明らかになってきました。

 さて、ヒトの日常生活は意識されることのない体内時計(生体リズム)の働きによって極めて自然に24時間周期で営まれています。睡眠・覚醒リズムは、ホルモン分泌リズム、深部体温リズムと共に、24時間周期の概日リズムで営まれ、ヒトの生命力を担っています。

 ところが、ヒト元来の睡眠・覚醒リズムの周期が25時間である事が、現代では大きな問題になってきました。ヒトは地球上に住んでいるので、25時間リズムを何万年もかけて地球の自転時間(約24時間)に合わせて生活するようになりました。つまり、 25時間時計を毎日、地球時計(24時間)にリセットしなければならないわけですが、ヒトは「朝の光を浴びる」事によりリセットするシステムを獲得したのです。私たちは、毎日0時前に休んで、朝起きるまでにその人が必要な睡眠を十分取っている生活では問題は起こりません。(ヒトの必要睡眠時間は個人で違いますから個人個人が自分自身の必要睡眠時間をよく知っておく必要があります)

 ですが、夜型生活が習慣化した現代では夜0時を過ぎて眠りにつくヒトが大勢を占める時代になってきました。入眠時間が遅くなっても起きなければならな い時間は変わりません。当然、総睡眠時間が短くなって自分に必要な睡眠時間を確保することができなくなる状態が現れます。それだけではなく、24時間周期の生活リズムの維持が困難になってヒト本来の25時間周期に近づいてしまいます。この状態では、入眠すると直ぐに現れていたノンレム(non-REM)睡眠の中でも、脳の休養に大事な徐波睡眠と呼ばれる深睡眠(成長ホルモン分泌が盛んになる状態)がなかなか現れず、浅い睡眠状態が続いた末にやっと朝方になって眠りが深くなって来ます。即ち、浅くて疲れが取れにくい睡眠状態が続く上に、せっかく現れた深睡眠時に起きなければならず、更に睡眠時間が短くなりますから、朝起きが困難となり、「脳の働きを守る」ことができず脳の働きが低 下して問題が起こります。

 まず自律神経症状を主とした原因が曖昧な体の不調が出現し、進行すると集中力、記銘力、持続力が低下し始めます。学校に行くだけで奇妙に疲れはててしまいます。このような背景から子ども達は、自分でもなぜだか分からないけれども何となくからだが言うことを聞いてくれず 不登校状態に陥ります。この不登校状態では、入眠時間が、0時を越えており、10時間の長い睡眠状態であるにもかかわらず疲労は回復せずだらだらとしてメリハリのない生活状態となってしまいます。入眠時間が午前2時頃になり、かつ、10時間睡眠のため朝の社会活動開始時間に起床出来ない睡眠を「睡眠相後退症候群」と呼びます。

  また、入眠時間が毎日少しずつ後ろへずれてしまう『非24時間型睡眠障害』や、入眠や覚醒時間が一定せずバラバラになってしまう『不規則型睡眠障害』も現れますが、どれもやはり長時間(10時間)睡眠が必要になります。これらの、 睡眠障害はヒトの生体リズムの混乱により引き起こされており、治療が極めて難しく難治性睡眠障害と呼ばれています。更にこの睡眠問題は日本だけの問題ではなく世界に共通している事が分かってきました。私たちは、難治性睡眠障害を伴い疲労が回復せず、学校や社会生活が困難な状態を「小児慢性疲労症候群」と呼んできました。